「賃貸の契約をしたいけどよくわからない」
「賃貸の更新料って?」
上記のような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
この記事では不動産の賃貸借契約や更新時期について詳しく解説します。
賃貸借契約とは
「賃貸借契約」とは、「当事者の一方が物の使用および収益を相手方にさせることに対し相手方が賃料を支払う約束をする契約」のことをいいます。
簡単にいえば、個人や団体が自らの所有物を他者に貸すことで料金を得る契約のことです。身近なものではレンタカー、レンタルCD・DVD・ブルーレイディスク、貸衣裳、家電などがあります。
賃貸借契約と聞いてマンションやアパート、一戸建てなどの賃貸住宅を思い浮かべる人も多いでしょう。賃貸住宅のメリットは進学や就職、転勤や家族構成の変化などに合わせて住居を選べ、転居も持ち家よりは手軽なことで、多くの人が利用しています。
この記事では、マンション、アパートなどの集合住宅や一戸建て住宅の賃貸物件を貸し借りする際に交わす賃貸借契約と、契約の更新について解説します。
物件を貸す人を「賃貸人」または「貸主」、借りる人を「賃借人」または「借主」といい、2者間で交わすのが賃貸借契約です。賃貸借契約には「普通賃貸借契約」と「定期賃貸借契約」の2種類があります。
- 普通賃貸借契約:賃貸借期間が1年以上あり、借主と貸主が中途解約の意思がなければ、同じ条件で自動更新されるもの
- 定期賃貸借契約:賃貸借契約期間が満了した時点で契約が終了し賃貸借の継続には、契約の更新ではなく新たに契約をしなおす再契約を行うもの
重要事項説明書とは
不動産の賃貸借や売買の際に、宅地建物取引士が借主または買主に契約上重要な事項を説明することを重要事項説明(重説)といいます。
宅地建物取引業法第35条には「宅地建物取引業者は、不動産の売買、交換、賃貸において、不動産の権利関係や、権利制限、属性などの重要事項を明確に書面化し説明する義務がある」と定められています。
重要事項説明を行う宅地建物取引士とは国家資格で、不動産の専門知識を持たない人たちに契約が不利にならないよう、専門的な情報を提供する立場にあります。
重要事項説明の目的は物件の重要事項を事前に説明し、借主が納得して賃貸借契約に署名・押印できることで、後のトラブルを避けることにもつながります。重要事項説明は書面化され、賃貸借契約を交わす前に行われます。
重要事項説明書には、対象となる物件や取引条件に関する重要事項が記載されています。物件の所有者、住所、物件の情報、水道・電気・ガスなどの設備に関する情報、契約の更新、契約の解約などについてです。
重要事項説明書で特に注意して見ておきたいのは、以下の項目です。
- 月々発生する金額:賃料、共益費、管理費、町内会費など
- 入居時に発生する金額:敷金、礼金、保険料、鍵交換代、室内清掃代、駐車場プレート代など
- 賃貸借契約の更新時に必要な金額:貸主への更新料、管理不動産会社への更新事務手数料、火災保険料など
- 契約を解約する場合は退去日の何日前までに貸主に通知するか
- 禁止事項にはどのようなものがあるか:ペット飼育不可、楽器演奏不可、危険物搬入不可、転貸不可など
- 退去時の敷金、補償金等の精算について
- 原状回復の費用について
「原状回復」とは、賃借人が退去する際に入居時の状態に戻して賃貸人に返すことです。ほとんどの場合、入居時に支払った敷金と相殺され、過不足を精算するかたちになります。
2020年8月からは、「水害ハザードマップの説明」が重要事項説明書に追加されています。その物件に、どの程度の水害リスクがあるかを示すものです。近年の大規模水害による甚大な被害をうけ、不動産取引において水害リスクに関する情報が不可欠であるとの理由から加えられました。
出典:国土交通省
重要事項説明書は項目も多く、法律や不動産の専門用語も含まれていて、即座に理解するのが困難な場合もあります。そのため事前に写しをもらい、自宅で目を通しておくことをお勧めします。
なお、2017年10月1日に賃貸物件には、オンラインでの重要事項説明が認められました。これを「IT重説」といいます。オンラインであれば遠方やその他の事情で不動産会社を訪問できない人でも、説明を受けることが可能です。
重要事項説明書と賃貸借契約書の違いは、重要事項説明書は物件の賃料や更新、設備などに関する取扱説明書のようなもので、借主が契約前に契約内容を確認するためにあります。
賃貸借契約書は、物件所有者(貸主)と物件を借りる人(借主)との関係を書面化して双方が保管するものです。重要事項説明書と賃貸借契約書は内容が重複している部分も多いですが、両方とも大切な書類ですのでしっかり目をとおし保管しましょう。
賃貸借契約書の締結
借主は重要事項説明書にもとづき宅地建物取引士から説明を受け、承諾すれば署名・押印します。次いで、賃貸借契約書を交わします。
賃貸借契約時に必要な借主の書類
- 収入証明(源泉徴収票、納税証明書、確定申告書の写しなど)
- 入居予定者全員の住民票
- 身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証など)
- 印鑑証明書と実印
- 金融機関情報(家賃引き落とし口座情報と届出印)
- 連帯保証人関連(保証人の収入証明、住民票、印鑑証明書など)
賃貸借契約時に必要な借主の費用
- 前払い家賃
- 共益費・管理費
- 敷金、礼金
- 借家人保険料
- 駐車場使用料
- 仲介手数料
前払い家賃は入居月と翌月分の家賃を支払うもので、入居月分は日割り計算されます。
共益費と管理費は、ほぼ同じ意味で使われることが多く、マンションやアパートの共有部分(エントランス、廊下、階段、エレベーター、ベランダ、ゴミ置き場、駐車場、駐輪場など)の清掃やメンテナンス、管理にかかる費用のことです。
敷金は地域や物件により異なりますが家賃の1~3ヶ月分が一般的で、敷金不要の物件も増えています。敷金は貸主への預け金という性質があり、家賃の未払いや退去時の原状回復費用にあてられ、残金があれば返還されます。礼金は貸主への謝礼金で、賃料の1ヶ月分が多く、退去時に返金はされません。最近は礼金不要の物件もみられます。
不動産会社へ支払う仲介手数料の上限は賃料の1ヶ月分+消費税(賃料×1.1)円と定められており、貸主と借主で折半かまたは片方が全額払う場合もあります。
賃貸借契約書に記載される主な内容
- 契約締結日
- 賃借人名
- 賃貸人名
- 物件の表示(名称、所在地、種類、面積、間取り、家賃、共益費・管理費、駐車場使用料など)
- 賃料の支払い方法:振込口座・口座名義人、支払日など
- 契約期間:通常は2年間
- 契約更新料、更新事務手数料について
- 原状回復について
- 禁止事項について
- 通知義務について
- 契約解除予告について
なお、敷地内の駐車場を借りる場合は、別に自動車保管場所使用契約書を交わす必要があります。
賃貸借契約の更新について
賃貸物件への入居時には、貸主と借主の間で賃貸借契約書を交わします。賃貸借契約には先述のとおり「普通賃貸借契約」と「定期賃貸借契約」があり、ほとんどの賃貸物件が普通賃貸借契約を採用し、契約期間は2年間が一般的です。
契約期間満了後も同じ物件に住みたい場合は「契約の更新」を行えば継続して居住することが可能です。契約の更新時には、以下の費用がかかります。
- 更新料
賃貸借契約の更新には「更新料」がかかります。更新料は貸主に支払うもので賃料の1~2ヶ月分が一般的ですが、地域や物件により異なります。
- 更新手数料
更新料の他に、物件の管理会社(不動産会社など)に「更新(事務)手数料」を支払うことがあり、賃料の0.5ヶ月分が一般的です。
- 損害保険料
賃貸借契約時に加入する住宅火災保険は通常2年契約になっているため、更新時に加入しなおします。
賃貸借契約の更新時期
賃貸借契約書に記載された契約満了日の1~3か月前に、貸主または不動産管理会社から更新の通知が届きます。引き続きその物件に住みたい場合は、契約の更新を行います。更新に必要な書類を整え、期日までに更新料を支払うことで契約が更新されます。
更新の前後に転居の予定がある場合は、契約満了日前に退去すれば更新料を支払う必要がありませんので、余裕をもって早めに解約の連絡をしましょう。
まとめ
賃貸借契約は所有物の使用と収益を交換する契約であり、賃料を支払うことで使用権を得るものです。一般的には賃貸住宅を思い浮かべますが、これには普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の2つの形態があります。賃貸借契約の際には、重要事項説明書を通じて契約上の重要な事項が説明され、借主が納得した上で契約が締結されます。契約更新時には更新料や損害保険料が発生するため、契約満了日の前後には注意が必要です。